すぐそこにある食糧危機
昨年70億人を突破した世界人口。2050年までには90億人に達するといわれている。人口が増えることで、まず真っ先に懸念されるのが、食糧事情だ。
Ecologistによると、国連やイギリスの貧困者救済機関オックスファムは、今後5年以内に世界的な食糧危機が起きることを想定した準備を進めているという。
実際にアメリカ、ロシアで起きた干ばつやアジアの雨量減少のせいでトウモロコシや小麦の価格は、今年6月から国際取引市場で50%近くも値上がりしているのだ。
今月5日から開かれている「世界水週間」フォーラムの年次総会ではストックホルム国際水研究所が食糧生産に必要な水の不足を指摘するリポートを提出した。
それによると世界全体の食糧生産量は伸び続けているものの、今現在、世界のうちの9億人はいつも飢餓状態で、20億人は栄養不足だという。さらに今世紀半ばまでに増えるだろう20億人分の食糧を増産するには、圧倒的に農業用水が足りないというのだ。
肉食が地球を食い尽くす?
同研究所は、その対応策のひとつとして、食生活の転換を推進している。アメリカをはじめとする欧米諸国では肉中心の食生活が定着しているが、食肉を供給するためには、まず家畜に与える飼料を生産するため、その栽培に大量の水を消費してしまう。
しかし、野菜中心の食事に切り替えていけば、肉中心の食事をとる場合にくらべて、水の消費量が5分の1から10分の1ですむというのだ。
また、国際水管理研究所のディレクター、コリン・チャーターズ博士はアフリカのサハラ地帯と南アジアでの現地調査の経験をもとに、農民たちを食糧危機から守るには、井戸を掘る資金援助をするなど小規模の技術支援をするほうが、高い費用を投じて大規模な灌漑設備をつくるより効果があると提案している。
Ecologist
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