抗議のミサ延期も
フィリピン、ルソン島北部の高原都市バギオ。南国の避暑地と知られる風光明媚なこの土地が、いま国中を騒がせている。
事の始まりは今年1月。フィリピンの一大企業「SMプライム・ホールディングス」が経営するショッピングモール「SMバギオ」が敷地拡張案を発表し、松などの木、数百本が生い茂る「ルネタの丘」の開発を計画していることがあきらかになった。
これに対し、市民、環境保護団体、カトリック教会などが森林破壊、景観破壊にあたる行為だと抗議。大規模な反対運動に発展した。
カトリック教会バギオ教区は、これまでSMバギオの従業員のため、毎週日曜日の朝にモール内の中庭でミサを行っていた。しかし、4月に入ってから工事計画を中止するまでミサを行わないと宣言。「ビジネス拡大のために木を切り倒すことは、バギオ市民の本意ではない」と司教は憤りをあらわにした。
“環境優良企業”に向けられた不信感
このSMバギオ、じつは米国グリーンビルディング協会から環境に配慮した建物に与えられるLEED認証を受けている。今回の工事については、「環境天然資源省と専門家の指導のもと、すべての木を適切な方法で移植する。森林破壊にはあたらない」と環境優良企業ぶりをアピールした。
SNSではいまだ交戦中
しかし先月16日、裁判所が工事の一時凍結を命じ、SMバギオは工事計画を中断。だが、その後も自社ホームページやフェイスブックで、この措置は不当だという考えを示している。一方、工事に反対する市民の間ではSMバギオの不買運動を呼びかけるツイートが流れるなど、水面下での対立が続いている。
(編集部 野口和恵)
SMプライム・ホールディングス
http://smsupermalls.com/米国グリーンビルディング協会
http://www.usgbc.org/