自然と人間の営みから成る絶景
6日まで開かれていた世界遺産委員会で、ユネスコは危機にさらされている世界遺産リスト「危機遺産リスト」に加えていた、フィリピン・コルディリェーラの棚田群をリストから除外すると決めた。
この棚田群は、約2000年前、山深いルソン島北部のイフガオ州で農耕をはじめたイフガオ族によって拓かれたものといわれている。険しい山肌に水田が整然と連なるさまは「天国への階段」ともよばれるほどの絶景。1995年に世界遺産に登録された。
イフガオ族は現在も農業を生業としているが、近年は都市に出る若者が増え、働き手のいなくなった水田が荒れはじめたことから、棚田群は2000年に危機遺産リストに加えられていた。
ボランティアも参加して保存活動
それから12年。農業省をはじめとする政府や、国内外のNGOの財政支援を受けて、イフガオ族の間で棚田の整備が進められた。週末には、ボランティアが来て作業を手伝った。
イフガオ族代表のブラウナー・バグイラットさんは、Inquire誌の取材に対して、「危機遺産リストから外れたことは、保存活動に尽力している人たちの励みになる。うれしい」と話す。しかし、その一方で、こう語っている。
「イフガオ族の若者が村から出ていく原因は、都市との格差にあります。ここで農業をしているよりも都市に出たほうが豊かで快適な暮らしができると考えているのです。耕作放棄の問題は、これからも続くでしょう。私たちはこれからもこの棚田を次世代に残すために努力を続けていかなくてはなりません」
(編集部 野口和恵)
Inquire
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