着床式、浮体式に課題
株式会社大林組は、2016年2月17日、建設コストの削減や工期の短縮に貢献する洋上風車の基礎とアンカーに適用する海洋構造物「スカートサクション」を開発したと発表した。
洋上風力発電で使用される風車には、風車の支柱が海底に到達している着床式と風車本体が海洋に浮いている浮体式がある。
浅い水深に適した着床式は、基礎にモノパイル、ジャケット、重力式などの方式を用いるが、洋上風車の大型化、設置場所の水深の深化に伴い、基礎が大型化して高コストになる。
日本には水深が急に深くなる海域が多く、深い水深に適した浮体式の導入増加が見込まれる。型式もセミサブ型、スパー型、TLP型など多様だが、設置コストは着床式より高い。
スカートサクション適用のメリット
スカートサクションは頂版と頂版から下方に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)から成る。海底地盤に貫入させたスカートで洋上風車を固定するため、風や波浪に対する海底地盤からの引き抜き抵抗が、自重と摩擦抵抗の着床式の基礎で約3倍、自重だけの浮体式のアンカーでは約5~8倍になる。
スカート内からの排水が発生させるサクションで貫入するから、大型の杭打ちなしで海底に設置でき、着床式洋上風車の基礎工事にかかるコストは約20%、工期は約40%削減される。
洋上風車を垂直に緊張係留するTLP型は海域を専有する面積が小さいため、生物への影響が少ない、係留材は少量、動揺が小さく発電効率が高いという利点をもつ一方、アンカーが大型で設置コストが高い。
浮体式洋上風車のアンカーにスカートサクションを適用すると設置コストが削減されるが、TLP型の場合、最もメリットが大きい。洋上風車本体や基礎工事のコスト削減に加え、資機材運搬の容易さで工期は半分となり、高効率で環境負荷の少ない洋上風力発電として、今後、活用が期待される。
(画像はプレスリリースより)
株式会社大林組 プレスリリース
http://www.obayashi.co.jp/press/20160218_1