充実種子と不稔種子を選別
九州大学、住友林業株式会社、国立研究開発法人森林総合研究所は、主要な造林樹種から発芽する種を高確率で選別する技術を共同開発した。
森林資源保有国の日本は国土の3分の2を森林が占め、全森林の4割は産業に利用するために造成された人工林だ。林業を成長産業化するには、人工林の活用と伐採跡地の再造林に加えて、苗木の生産コストの低減も求められる。
造林樹種のスギ、ヒノキは不稔種子(発芽しない種)の形成頻度が高い上に、採種地や採種年でも変動する。種子の外観(肉眼選)、大きさ(篩選)、重さ(風選)、密度(水選)などの特性で選別するが、スギやヒノキは充実種子と不稔種子の特性が酷似し、効率的な選別は困難だ。
解剖して内部を観察すれば選別は容易だが、解剖された種子は発芽ができなくなる。
赤外光の吸収
研究グループは、化合物によって吸収する赤外光の波長が異なることに着目した。赤外光は種皮の薄い層を透過でき、内側の調査にも適している。
解析すると、充実種子は不稔種子より1,730ナノメートル付近で赤外光を吸収しやすいとわかった。この波長の光を照射して、赤外線カメラに「暗く」映る種子は高確率で充実種子となる。これを基準に充実種子を選別した結果、正確性は95%以上だった。
この選別技術により、種子の発芽率や利用効率、育苗にかかる労働生産性の向上が期待できる。苗木生産のコスト削減は森づくりを推進する力になる。苗床に一粒ずつ種をまく一粒播種機と併用して間引きや移植などの工程を省ければ、育苗コストのさらなる低減化も可能だ。
今後は、充実種子の自動選別機を開発して、高発芽率の種子を全国に供給する展開が考えられる。現在、選別した充実種子を早期、同期的に発芽させる発芽誘導処理技術を開発している。
(画像はプレスリリースより)
九州大学、住友林業株式会社、国立研究開発法人森林総合研究所 プレスリリース
http://sfc.jp/information/news/2015/2015-06-18.html