中国人も食べ物が心配
中国では若者の農業離れが深刻だ。若者のなかには、農業は低賃金で時代遅れで、階級が低い者の仕事だという偏見がある。その一方、2008年の粉ミルク毒物混入事件をはじめ、食の安全性を問われる事件が国内で相次いでいることから、安全な農作物を食べたいという声は高まっている。
そのなかで、ゆっくりとではあるが、地産地消をベースとし安全な農作物を栽培しようとする地域支援型農業が広がっている。
北京に近い海淀地区の村にある「リトルドンキー農場」。アメリカで地域支援型農業を学んだ若い女性ヤンさんが立ち上げた農場で、有機野菜を栽培している。
2009年に農場を開いたとき従業員はたった10人だった。それが今は30人に増え、インターンに応募する若者も多い。
工場から農場へキャリアチェンジ
ヤンさんは地域支援型農業を広めるため、大学に求人に出向いたりコミュニティでプレゼンテーションを行ったりしている。食べ物の生産過程について、ていねいに話すことで、人々の意識が変わっていくと感じている。
江蘇省の一部の地域では、今でも農業が中心産業だ。江蘇省は、収益を上げるために地域支援型の農園を開くことを決めた。リトルドンキー農場を視察し、ヤンさんに新しい農園の立ち上げの指導も依頼している。
工場労働をやめて農業を始める若者も、なかにはいる。ある地域支援型農園で働く女性は、2006年まで工場で働いていたが、家の事情で現在の農園に勤めはじめた。
最初は乗り気ではなかったが、レイチェル・カルソンの「沈黙の春」を読んで、農薬汚染の恐ろしさを知り、生産者の顔が見える地域支援型農業の価値に気づいた。「多少賃金が低くてもたいへんな労働でもやりがいのある仕事です」と語る。
リトルドンキー農園(中国語・英語)
http://www.littledonkeyfarm.com/portal.php