「生活の木」が迎える危機
インクワイラー紙によると、フィリピンの主要輸出品目であるココナッツの木が高齢化し、近年、収穫量が低下しているという。
フィリピンでは、ココナッツは「生活の木」とよばれている。ココナッツの実からはゼリーのような果実、すっきりとした味わいのジュース、ヤシ油を取り出すことができるほか、殻は工芸品や木炭の原料として使うことができる。また薬の原料にもなるなど、じつに多くの恵みをもたらしてくれる木なのだ。
the Philippine Coconut Authority (PCA) によると、フィリピンの農地の27%は、ココナッツの木で占められているというほど生活に関わり深い作物だ。
しかし現在、樹齢60年以上の木が全体の14%を占めているという。ココナッツの木はピーク時には、1年間に40個から60個の実をつけるが、高齢になると、ほとんど実をつけなくなるため、伐採して木材にするしかなくなる。
またPCAによると、近年の気候変動も、収穫量の減少を助長しているという。とくに2009年から2010年にかけて発生したエルニーニョ現象のときには降水量が減り、その影響が顕著になった。
ココナッツ再生で経済効果を
現在ココナッツ農家の1年間の年収は、3万ペソ(約6万円)。これはフィリピンの貧困ラインとされている9万8000ペソ(約20万円)を大きく下回る。
収穫量の低下は、フィリピン経済にとっても大きな損失だ。PCAによると昨年前半の輸出量は前年比で約40%の減少だったという。
そこでPCAは、ココナッツの再生プロジェクトを計画している。このプロジェクトは農家が撒いた種の数に応じて賃金を支払い、その後も苗の成長に応じて報酬を支払うというものだ。
ココナッツの世界的な需要は高まっており、単価自体は上昇傾向だという。プロジェクトが成功すれば、将来のフィリピン経済に潤いを与えるにちがいない。
(編集部 野口和恵)
インクワイラー
http://newsinfo.inquirer.net/53037/